登場人物紹介

主人公

フィラ・ラピズラリ - Phila Lapizlali

ユリンの町の酒場「踊る小豚亭」で働く十六歳のピアノ弾きの少女。二年前からの記憶がない。真っ直ぐな褐色の髪を背中の中程まで伸ばしている。瞳の色も褐色。魔力がないのに突然瞬間移動してしまう特異体質の持ち主。ごく普通の一般市民だったはずが、その不思議な力のためにジュリアンの目的を巡る壮大な抗争に巻き込まれていく羽目になる。が、自分で首を突っ込んでいる部分もなくはない。基本的には温厚で控えめな性格だが、時折妙に負けず嫌いな性格が首をもたげることがある。ピアノに関しては練習熱心で、プロになれるだけの実力も持っている。

ジュリアン・レイ - Julien Lai

ユリン領主にして、若干二十一歳で聖騎士団団長も務める貴族の青年。金髪碧眼で、他者を威圧するほどに整った無機物的に冷たい美貌の持ち主。記録上最大の魔力を持ち、剣の腕も魔法の腕もかなりのもの。整った容姿と気品のある立ち居振る舞い、礼儀正しさと公正性で、瞬く間に街の人々の支持を獲得する。大いなる目的のために行動しており、賛同する味方は多いが敵も多い。誰に対しても一定の距離を保ち、その真意を打ち明けることはない。何故かフィラに対してだけは、冷ややかでそっけない態度を取ったりからかうような言動をしたりなど、気まぐれな面を見せる。

聖騎士団の人々

カイ・セルス - Kai Sers

二十歳の聖騎士団副団長。黒髪に黒い瞳の東洋人。細身で童顔。ジュリアンの領主就任以前から町を守ってきた。ジュリアンの幼馴染みであり、彼の妹とも何か浅からぬ縁があったらしい。性格は真面目で融通が利かず、聖騎士団内では信頼されつつも煙たがられている部分がある。聖騎士団の誓いに忠実に守るべき民草のために在ろうと努めるが、悪法も法であるという信念の持ち主なので、その狭間で苦悩することも多い。

ランティス・セルバリウス - Lantis Selbarius

ジュリアンが連れてきた聖騎士の一人。二十五歳。大柄なネグロイド。縮れた黒髪は五分刈りで、分厚い聖騎士団団服の上からでもよく鍛えられた筋肉が想像できる、逞しい体格の男。軟派な性格で女好きだが、同じくらい音楽も好き。ただし聴く方専門。クラシック系の音楽にも通じ、記憶を失う前のフィラがピアニストとしてそこそこ名前が知られていたことも知っていた。ジュリアンに対して軽口を叩ける数少ない人間の一人。やや短気ではあるものの、兄貴分的存在として聖騎士団内でも頼りにされている。

フェイル・ヴァーン - Feil Vern

ジュリアンと共にユリンへやって来た四十七歳の聖騎士団参謀兼ジュリアンの秘書。痩せ形で長身のロマンスグレイ。代々レイ家の執事を務めてきた家系に生まれる。次男であったため執事ではなく護衛としての訓練を積んでいたが、跡取りであるジュリアンが聖騎士団に引き取られたことをきっかけに聖騎士団入りを目指し、ジュリアンが次期団長として指名された頃にはしっかり聖騎士の座を射止めていた。それからは常にジュリアンの補佐を務めている。常に冷静で紳士的な態度を崩さず、若手の多い聖騎士団では保護者のような役割を担うことも。

リサ=ミズホシ - 水星 里沙

ジュリアンが連れてきた聖騎士の一人。黒髪に黒い瞳の日本人。背中の真ん中あたりまで届く長い髪をポニーテールに結わえている。孤児であるため正確な年齢は不明だが、二十一歳前後だと推定されている。明るく人なつこい性格だが、妙に現実的で醒めた側面も持っている。ジュリアンとカイの幼馴染みで、ジュリアンに対して軽口が叩ける数少ない人間の一人。同僚のダストとは犬猿の仲でしょっちゅうぶつかり合っている。普段は気まぐれで気分屋だが、与えられた任務はきっちりとこなすため、騎士としての信頼度は高い。

フィア・ルカ - Phia Luca

フィラの双子の妹。栗色の髪はフィラよりも幾分か色素が濃くて黒髪に近く、肩の上で切りそろえられている。魔力のないフィラと違い、平均値の三倍という強い魔力を持つ。フィラとは幼い頃生き別れになったきりだったが、聖騎士団員の候補となっていたことから偶然の再会を果たす。大人びた雰囲気の冷静な少女。治癒呪文に優れ、記憶力も抜群な優秀な騎士だが、やや寂しがりなところも。日本文化を愛好しており、特に桜餅には目がない。桜餅は自作することもあり、フィラにもよく分けてくれる。

ダスト・アズラエル - Dust Azrael

聖騎士の一員にしてジュリアンの恋人。年齢は二十歳前後。色っぽい美女で、緑がかった黒髪は顎のラインできっちりと切りそろえられ、つり目を強調するアイメイクや艶やかな赤い口紅と相まって、えらくシャープでキツそうな印象を与えている。誰に対しても厳しく冷淡な態度を崩さないが、同族嫌悪を抱いているはずのジュリアンに対しては思いやるような言動を取ることもある。

レイヴン・クロウ - Raven Crow

ジュリアンが連れてきた聖騎士の一人。くせのない黒髪に切れ長の瞳の東洋人。顔立ちはカイよりも鋭いが、雰囲気は柔らかい。非常に淡泊な性格でどこかワンテンポずれており、つかみ所がない。銃器の扱いに優れており、魔力のないフィラに身を守る術を与えるため、拳銃の射撃指導にあたる。

ユリンの町の人々

エディス・ベイカー - Edith Baker

フィラを引き取ってくれた酒場の女将。四十二歳。現在はエルマーと共にフィラの保護者を務めており、フィラを実の娘のようにかわいがっている。毎日大勢の客が訪れる「踊る小豚亭」を切り盛りするたくましい女性。

エルマー・ベイカー - Elmer Baker

無口な「踊る小豚亭」の主人。四十八歳。ユリン一の料理の腕を誇る。滅多に口を開かないが、前領主を弾劾する嘆願書を出す際代表者を務めるなど、いざというときは頼りになる男だとユリンの町での評判は高い。

バルトロ・グレンデス - Bartolo Gurendez

六十四歳のかくしゃくとした左官屋。白髪を上品になでつけ、良く整えた口ひげが自慢。自作の飛行機で空を飛ぶのが夢だったが、ジュリアンの手によって夢を抱いていたという記憶ごと飛行機製作に関わるすべてを消されてしまう。

ソニア・ヴィラール - Sonia Vilar

十六歳の花屋の娘。豪華な金の巻き毛に青い瞳、ふくよかな体つきの陽気な少女。明るい表情ときびきびした動作が特徴的な、華やかな雰囲気の持ち主。噂好きで野次馬根性が旺盛。そのためフィラやレックスを振り回すことが多いが、世話好きでお節介焼きなので友人のために骨を折ることも多い。

レックス・ルガード - Rex Lugard

十七歳の猟師見習い。薄茶色の猫っ毛にハシバミ色の瞳、顔つきにも体つきにもまだ幼さを残している。フィラの友人でソニアとは幼馴染み。記憶をなくしたフィラの第一発見者。いつでものんびりとした態度を崩さずマイペースなので、感情表現がわかりにくい。全くそうは見えないが、実はかなりの負けず嫌い。

中央省庁区の人々

アースリーゼ - Earthleaze

十八歳の光の巫女。銀髪碧眼の繊細で高慢な雰囲気の美少女。光神リラの化身として、人々の信仰を一身に集める。フォルシウス家出身。四年前に先代の巫女が崩御し、フォルシウス家とレイ家の政争の末その位に就いた。ジュリアンに恋心を抱くが立場は対立しており、そのジレンマに苦しむ。

フランシス・フォルシウス - Francis Forsius

二十一歳の光王親衛隊隊長。銀髪に青い瞳。ジュリアンに匹敵するほどの美貌の持ち主。穏やかで優しげな雰囲気とは裏腹に、冷徹な政治家としての側面を持つ。ジュリアンとは対立する立場にあるが、お互い一番理解し合えるとも思っている。が、それ故にお互い苦手意識があったりもする。フィアに好意を抱きつつも、フィラの中に眠る「何か」に対して強い関心を示す。

アウトローたち

ティナ - Tina

青い目で白い毛の、雄の子猫の姿をした光の神。神としては弱い力しか持っておらず、普段はフィラのペットのふりをしているが、人間の言葉を話すことが出来、少量の光なら自分の意志で操ることも出来る。フィラとは守護神契約を結んでいるわけではないが、家族愛や友情にも似た感情と絆で結ばれている。守護神でない神が人間と行動を共にする例は少なく、ティナ自身もこの選択は正しかったのかと迷うことがある。なぜかジュリアンを一方的に敵視している。

ウィンド - Wind

作り物のように整った顔立ちに、腰まで届くほど長く銀髪を伸ばした謎の占い師。年齢不詳。一見すると二十代後半の美女だが、その時々で少女のようにも老婆のようにも見えたりする。神出鬼没で思わせぶりな言動が多い。フィラの過去やジュリアンの目的とも何か関係があるらしい。

リーヴェ・ルーヴ - Lieve Ruve

コウモリに似た翼を持つ漆黒の闇の竜。雌。ジュリアンの知己で、お互い恩義を感じる間柄。叡智を持つ強大な竜だが、人間との関わりが少なかったせいで子どものような言動を取ることも。ジュリアンに対し、深い信頼を寄せている。

黒衣の女

黒い霧のような長衣を身に纏った真っ白な肌の女性。色素の薄い真っ直ぐの長い髪に暗い色の瞳。年齢不詳。ウィンドに似ているが、憎悪を湛えた瞳はウィンドの穏やかな雰囲気とは対照的。神出鬼没にフィラの前に現れる、危険な雰囲気を漂わせた謎の美女。