序章 Water talks with Homesick

 夢を見た。
 夢の中では、水が果てしなくどこまでも続いていた。
 どこまでも、どこまでも。

 そして、私は自由だった。
 時折、ゆらゆらと水が揺れる。
 遠くを泳いでいく魚の群れの起こす波で。

 でも、それだけ。

 ――淋しい――

 夢の中の私は、何も覚えていなかった。
 私が誰なのかも。この水が何であるのかも。
 でも私は、たった一つだけ覚えていた。

 ――淋しい――

 淋しい、という、気持ち、だけ。